2017年12月14日木曜日

性決定メカニズムが多様化

文献探しで午前中が終了。

昼から統計ゼミ、会議、PCR実験で終了。

別の文献を探していて偶然見けた重要な論文。

Diversity and evolution of sex determination systems in terrestrial isopods.
Becking et al. (2017) Scientific RepoRts, 7: 1084.

ワラジムシ類の性決定メカニズムが多様化していることを示した研究。

ちなみに、ワラジムシ類の性決定は、遺伝的には性染色体で決定し、表現型は性ホルモンが分泌されることで決まる。

内容としては、系統樹を作成して、性決定の進化パターンを示しただけだが、実験方法がとても勉強になる。

まず、系統樹作成に関しては、トランスクリプトームのデータを用いて88の遺伝子マーカーで作成している。陸生ワラジムシ類としては、初めての利用と思われる。

ただ、この方法はお金もかかり大変なので、と親切なことにサンガーシーケンス用に10個のプライマーを作成してくれた。これがワラジムシ類の系統解析のスタンダードになるのかな?

で、もう一つ厄介な性決定様式の解明。と言うのも、ワラジムシ類の性染色体は、形の違いが乏しいので、スタンダードな核型分析は適用できない。

近年では、分子生物学的な手法も色々と開発されているが、それをすぐに適用できる状況でもない。

そこで、造雄腺の挿入によるメスのオス化を使って検証している。これがなかなか面白い。

メスがヘテロと仮定した場合、つまり、オス/メス=ZZ/ZWのとき、


と仮説が立てられる。また、メスがホモと仮定した場合、つまり、オス/メス=XY/XXのとき、


と仮説が立てらるので、F1の性比で検証できる。

結論としては、解析した対象だけでも3回の性決定様式の進化が認められた。ボルバキアによる性染色体の消失が効いていると予想している。