2014年10月31日金曜日

お酒

メールのやり取りをしてから授業をして、午前中が終了。

午後は、宮古・石垣調査のサンプルを少し処理してから授業。今日は、学生がバラバラに外来種探しに行き、私は研究室で待機する日なので、その間に来週の授業の準備を進める。

実験・実習ができる遺伝子ネタを考え、結局、アルコール分解ネタに落ち着いた。

体内に摂取されたアルコールは、ADH酵素の働きによりアセトアルデヒドに分解され、アセトアルデヒドはさらにALDH2酵素の働きにより酢酸へと分解される。

アセトアルデヒドはヒトに有害で、お酒を飲むと気分が悪くなるのは、これが体内に蓄積されてしまうことが原因である。

でも、ALDH2酵素がアセトアルデヒドを分解してくれるんでしょ、、、と思いたいのだが、この酵素は517個のアミノ酸で構成されるのだが、487番目のアミノ酸がグルタミン酸のヒトとリシンのヒトがおり、リシンのヒトはアセトアルデヒドをあまり分解できないのである。

Genbankからこのアミノ酸をコードしている塩基配列データを入手。


赤線のところがGAAとなっているが、これはグルタミン酸を示している。しかし、このGがAに変異しているヒトは、コドン表から分かるようにリシンになってしまう。つまり、塩基1個の違いが、お酒の強い・弱い、厳密には、アセトアルデヒドの分解能力の高い・低いを決めている!

さらに、この遺伝子は不完全優性を示すことが知られている。つまり、両親からGAAを受け継いだグルタミン酸・ホモ型は分解能力が高く、逆に、両親からAAAを受け継いだリシン・ホモ型は基本的にアセトアルデヒドを分解できない。そして、一方の親からグルタミン酸型、もう一方からリシン型を受け継いだヒトは、少しだけアセトアルデヒドを分解できる体質となる。

専用のキットも発売されているので、塩基配列を調べるのも簡単そうだが、もっと簡単に自分の体質を調べる方法があり、アルコールパッチテスト、と呼ばれている。

絆創膏にエタノールを垂らし、上腕の内側に貼って7分待つ。


その後、はがして皮膚を観察し、赤くになっているヒトはリシン・ホモ型、10分後に赤くなるヒトはヘテロ型の可能性が高い。私の場合、直後に若干赤くなっているが、肌が黒くて分かりにくい、、、多分、リシン・ホモ型なのだろう。ちなみに、お酒は飲めない。


ちなみに、白人と黒人は、グルタミン酸・ホモ型しかいないのだが、黄色人種の約半数は、ヘテロかリシン・ホモ型なのだとか。

注意〜!

毎年、大学生が飲酒で死亡するが、その原因は基本的に急性アルコール中毒。これは、上記のアセトアルデヒドの分解能力とは関係なく、一気飲みによる血液中のアルコール濃度の上昇が原因である。

たくさん飲めるヒトでも、急に飲めば死ぬ、ということを覚えておかなければいけない。

こんなネタにしようかな。