2013年12月27日金曜日

シロアリの辞典

昨日の中間発表を聞いて、3月の生態学会に向けてもう少し頑張らないとマズいなと思い、急遽、コシビロのDNA抽出を開始。

サソリモドキについて、共同研究者からメールが、、、なぜ、こんなに仕事が早いのかと不思議に思う。

改めて年末にやっておくべき業務を書き出してみるが、どう考えても終わりそうにない、、、。

少し前に購入した本。


シロアリの事典

目次
1.シロアリと環境
2.シロアリと他の生物との関係ー寄生から共生までー
3.最新シロアリ生理学
4.カースト分化の生理機構
5.シロアリコロニーの遺伝構造と繁殖システム
6.シロアリの行動戦略
7.シロアリと防除対策
8.シロアリを利用する
9.シロアリと教育

1章は、熱帯を中心に、分布や生活史特性が簡潔に記載されており、熱帯におけるこれら動物の生態系機能としての重要性が理解できる。

2章は、木材を利用するために不可欠な腸内微生物から、かの有名なターマイトボール、さらには、共生線虫や巣内共生昆虫など、シロアリとともに生きる生物が網羅的に紹介されている.

3章は、古くて新しい?テーマの難分解物質セルロースとリグニンの分解酵素の話の他、哺乳類と共通のホルモン、ノルハルマンの話、そして、言われてみれば確かにと思った、水の少ない木材の中で生きるシロアリの水の使い方の話を扱っている.

4章と5章は、日本の誇る世界的な研究のオンパレード。例えば、シロアリには、いわゆる働きアリがいるのだが、その働きアリの中にも色々な分業があり、戦闘要員や育児に関わる個体などその役割は多様である。また、これらの役割によって形態も変わるのだが、生まれたときは皆同じで、成長とともに”何らかの要因”でその役割が決まる。現在、最新の分子生物学的手法を用いてこの”要因”の特定が進められており、次々に新しい知見が見つかっている.

6章は、同位体を使った大きなスケールの食性の話から、個体レベルの認識や反応に関する話などで、個人的には、シロアリの噛む力の計測方法のアイデアに感心した。

動物としてシロアリに興味がある人以外は、普通、7章に一番興味がいくのだろう。シロアリと聞けば大半の人が想像するであろう、家を食べるムシ=シロアリ、の被害からどのように守るのかという研究が紹介されている。4章や5章の研究成果を応用した防除法の開発も進められており、シロアリ研究の奥深さを痛感させられる。

8章と9章は、シロアリの研究以外の利用についてである。例えば、シロアリの材を分解する力を応用してエネルギーを作りだせるかも知れない。

で、この本を購入した最大の理由は9章で、教育への利用について書かれている。現役の教諭、もしくは、教諭経験のある方が執筆を担当しており、実践例が書かれているので、そのまま授業で使用することもできるだろう。腸内微生物の観察や道しるべフェロモンなど、私自身も実践している内容も多かったが、水素やメタンの実験などはやってみたいと思った。

文頭の推薦のことば、に紹介されているが、日本のシロアリ研究は、世界トップレベルである。その最新の研究成果が1冊で網羅できる、オススメの1冊。