2012年3月29日木曜日

エレガント

とりあえず、お絵描きは終了。現在ある標本で描けるところは終わっただけで、かなりの部位が紛失しており、お絵描きできなかった部位も多数残っている。

そして、、、Burmoniscus第2段に関して、結構大きな問題が発覚。半日の作業が無駄に、さらに、ここ数ヶ月の計画が頓挫、、、。自分のミスではないだけにドット疲れた。Burmoniscus論文は第2段はかなり時間がかかりそう。

とは言え、久しぶりにSEM撮影をしてみる。


先日の本と一緒に購入した本。とても有名な研究で、色々なところで取り上げられている。この本を読んだら、ついついカタツムリ、というか巻貝の巻形を見てしまうだろう。


右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化 (フィールドの生物学)

カタツムリ、または、でんでん虫。誰でも知っているあの動物。背中にしょっている殻、実は、多くの種が右巻きなのだそうだ。しかし、沖縄県の石垣島や西表島には、なぜか左巻きのカタツムリが生息しているのだとか、、、。

筆者は学部生の頃、あることに気づいた。この左巻きカタツムリが生息する地域には、セダカヘビというカタツムリを専門的に食べる変なヘビがいることに。そして、大胆にも「ヘビに食べられないようにカタツムリは左巻きに進化した」という仮説を考えた。

まず、筆者は、博物館などに保管されているセダカヘビの骨格標本、とくに、歯の並びを調べた結果、右顎の方が歯が多いことを発見する。

この発見で、仮説の信頼性を高めた筆者は、実際の動物を使って実験を進めるわけだが、実は、このセダカヘビ(西表島に生息するのはイワサキセダカヘビ)、とっても個体数が少ないヘビで、観察すること自体大変なヘビなのだとか。この本では、そのヘビを捕まえる苦労話に留まらず、実験に使う巻貝の選定方法、ヘビが本当にカタツムリを食べていることを証明することの重要性etc、科学的検証する上での注意点を実際の経験を基に教えてくれる。

物理や化学とは異なり、生物、とくに、生態学では条件設定に苦労し、結果、諦めることも多いが、この研究のスゴいところは、それらの条件を筆者の努力や共同研究者の協力により完全に揃えてしまったこと。

そして、仮説はとてもエレガントに証明される。この動画に全てが凝縮されている。右巻きのカタツムリは食われ左巻きのカタツムリは逃れる

コラムの利き腕の頻度依存選択や遅滞遺伝なども、とても勉強になる。そのうち教科書に載るであろう研究。高いけど必読の一冊。